※この記事は、Evocative Session Lab Practice3の内容をもとに構成しています。一部、講座での学びを前提とした専門的な内容を含みます。
体に力が入っている。なかなか緊張が取れない。
そういう状態を見たときに、「これはまだペーシングができていないのではないか」と考えることがあります。
もちろん、ペーシングができているかどうかを観察することは大切です。
ただ、体の緊張が残っていることと、ペーシングができていないことは、必ずしも同じではありません。
ここを少し分けて考えてみたいと思います。
ペーシングができているとは、どういう状態なのか
イエスセットというのは、単に相手から「はい」という返事をもらうことではありません。
相手の世界の中で、相手の言葉を使いながら、その人の価値観に触れて会話をしていく。
そうすると、「わかってもらえている」ということが起きてきます。
自分が言いたかったことが伝わっている。
まだ自分では言葉にできていなかったことを言葉にしてもらえた。
「そうそう」と納得する。
そういう状態です。
それをこちらが観察するとき、一番わかりやすいものの一つが頷きです。
会話をしている中で自然に頷きが起きてくる。リズムが合ってくる。息が合っているような感じになってくる。
さらに、こちらが少し姿勢を変えたときに相手の姿勢も自然に変わったり、こちらが顔を触ったときに相手も顔に触れたりすることがあります。
そういう非言語的なところにも、一緒のリズムに乗っていることが現れてきます。
つまり、こちらからの働きかけに対する応答性が構築されてきている。
これが、ペーシングができているかを見る一つの目安になります。
緊張が残っているからといって、ペーシングできていないとは限らない
では、ペーシングができれば、体の緊張はすべて取れるのでしょうか。
そうとは限りません。
なぜなら、「体が緊張している」というのも一つの状態だからです。
状態ということは、そこにはいくつもの構成要素があります。
例えば、ショートケーキを考えてみます。
ショートケーキは、それ単体の何かがあるわけではありません。
砂糖があったり、イチゴがあったり、いくつものものによって構成されています。
体の緊張も同じように考えることができます。
そこには心理的な要素があるかもしれないし、神経的な要素、筋肉的な要素もあるかもしれない。過去や未来に関係するものが含まれていることもあります。
いくつもの構成要素によって、「緊張している」という一つの状態ができているわけです。
だとすると、ペーシングによって変わるのは、その構成要素の一つかもしれません。
「この人は自分のことをわかってくれている」
そう感じることで、心理的な構成要素が変わる。
そうすると、状態全体もほんの少し変わるはずです。
完全に緊張がなくならなくても、まったく同じ状態ではなくなっています。
こちらがそれをどう観察できるか、ということになります。
「緊張があるか」ではなく、何が変わったのかを見る
例えば、腰が痛くて来られた方がいるとします。
最初は姿勢を伸ばして、かなり力が入っている。
そこで話を聞いていくうちにペーシングができてきて、呼吸やタイミングが合うようになった。
「わかってもらえた」という感じが生まれて、少し心が開いてくる。
すると、伸ばしていた姿勢から肩が少し丸くなって、ほんの少し力が抜けるかもしれません。
でも、まだ体には緊張がある。
それは腰が痛いから、筋肉を使ってかばっているのかもしれません。
痛みを感じながら、何も言わずに我慢して座っているのかもしれない。
だとすると、ペーシングはできていても、別の構成要素によって緊張は残ります。
だから、
「まだ緊張している」=「ペーシングできていない」
とは判断できません。
むしろ、その人の状態の中で、何が変わって、何がまだ残っているのかを観察する必要があります。
主介入の前に、どんな状態になっていればいいのか
ここからもう一つ考えたいのが、施術やセッションに入る前のプロセスゴールです。
例えば施術前の問診であれば、
「この人がどんな状態になっていれば、この後の施術の効果を高められるだろうか」
ということを考えることができます。
必ずしも、「体の緊張がすべてなくなること」がゴールではありません。
主介入をより効果的にするために、その前段階でどのような状態になっている必要があるのか。
催眠であれば、その後の暗示を受け取れる状態をつくっていく。
セッションであれば、こちらからの提案を受け取れる状態になっている。
ペーシングによって応答性が構築され、こちらからの働きかけを「イエス」と受け取れる状態ができてくる。
エリクソンは、そうした状態の中でストーリーを語っていました。
ペーシングができているからこそ、そのストーリーが受け取られる。
そして、そこから次のプロセスへ進んでいく。
施術でも同じように考えることができます。
主介入に入る前に、この人がどんな状態になっていればいいのか。
緊張があるか、ないかだけを見るのではなく、その人を構成しているさまざまな要素を観察しながら、今どのような状態にあるのかを見る。
そう考えると、「緊張が取れたかどうか」だけでは見えなかったものが、少し見えてくるかもしれません。
