今回は、Day1で扱った「パーツの理解を深める」というプロセスについて、僕自身の事例を使って整理してみたいと思います。

※この記事は、Evocative Session Lab Practice3 Day1の受講生向け補足解説として作成したものです。講座内で扱ったワークを前提に、一部専門的な内容を含んでいます。

今回のポイントは、問題について考えて答えを出すのではなく、問題を体験に変えていくと何が起きるのかということです。

僕自身、最近こんな感覚がありました。

「前のようなモチベーションがない」

何かが嫌になったわけでもないし、やりたいことがなくなったわけでもない。

でも、以前のように「次へ、次へ」と進んでいく感じがない。

言葉にするなら、

「今、潮目にいるような感じ」

でした。

① まずは、現在の自分について言葉で語る

最初は、この状態について普通に言葉で話していました。

「前のようなモチベーションがない」

「潮目にいる感じがする」

そんなことを話していると、一つのメタファーが出てきました。

それが、

「風呂に入る前、風呂に入っているところ、風呂から出た後」

というイメージです。

今の自分は、どうやら「風呂の中」にいる感じがする。

まだ出ていない。

でも、ずっとここにいるわけでもない。

ちょうど何かが切り替わっていく途中にいるような感じです。

ここまでは、まだ「大人の僕」が自分の状態について言葉で説明している段階です。

Day1でやったのは、ここからです。

説明だけで終わらせず、言葉を体験に変えていきます。

② 「風呂から出た後の自分」の位置に入ってみる

そこで、「風呂から出た後の自分」がいる場所を空間につくり、実際にその位置に入ってみました。

そして、そこから今の自分——つまり「風呂の中にいる自分」を見てみます。

すると自然に出てきた言葉が、

「もうちょっと、もうちょっと」

でした。

「早く出ろ」

ではありません。

「いつまでそこにいるんだ」

でもありません。

むしろ、

「もうちょっと、そのまま風呂の中にいた方がいいよ」

という感じでした。

未来の自分から見ると、今の状態は「早く抜け出さなければならない問題」ではなかったわけです。

「今はまだ、そこにいる時間だよ」

そんなふうに見えていました。

ここだけを見ると、とても優しいメッセージですよね。

だったら、

「そうか。焦らなくていいんだ」

と理解して終わってもよさそうです。

でも、ここで終わらないのが今回のポイントです。

③ 今度は「風呂の中の自分」に入ってみる

次に、現在の自分——「風呂の中にいる自分」の位置に実際に入ってみました。

未来の自分から、

「もうちょっと、もうちょっと。そのままでいいよ」

と言われている。

その言葉を、今度は受け取る側として体験してみるわけです。

すると、予想していなかったことが起きました。

「もうちょっと」と言われると、

もっと固まっていく。

動かない。

じっとしている。

さらに身体を固めて、その場に留まろうとする感じが出てきました。

ここで初めて、

「あ、この風呂の中で固まっている自分は、サバイバルパーツなんだ」

ということが見えてきます。

これは頭で考えていたときには出てこなかったものです。

もし言葉だけで進めていたら、

「今は焦らなくていいんですね」

「もう少しこの状態を大切にすればいいんですね」

という理解で終わっていたかもしれません。

でも、実際にその位置に入り、その言葉を受け取り、その自分を演じてみると、

身体は違う反応をした。

ここがとても重要です。

僕らがDay1でやったのは、こういうことです。

パーツについて考えるのではなく、パーツの位置に入ってみる。

そして、その姿勢、その動き、その感覚を実際に味わってみる。

講座の中でも、パーツの位置に入り、味わって戻り、また入るという往復を繰り返しながら、そのパーツへの理解を深めていきました。

④ 「固まっている」を、そのまま続けてみる

ここで、

「なぜ固まっているんだろう?」

と分析したくなるかもしれません。

でもここで、すぐに意味を探しませんでした。

むしろ、

固まっているなら、もう少し固まってみる。

その感覚の中に、そのまま留まってみました。

すると、少しずつ別の感覚が現れてきました。

まだ言葉ではありません。

「○○だから悲しい」

「本当は○○したかった」

というストーリーでもありません。

もっと曖昧な、

身体の中にある、何とも言えない感じ。

フェルトセンスです。

そして、その感覚をそのまま味わってみる。

僕はここを、今回のモデルでは「凍結自己に触れていくところ」として捉えています。

大切なのは、すぐに言葉にしないことです。

まずは、

言葉より先にある“感覚”を感じる。

その後で、

「もし、あえてこの感覚を言葉にするなら…」

とすると、僕の場合に出てきたのが、

「寂しい感じ」

でした。

「モチベーションがない」から始まって、「寂しい」にたどり着いた

ここまでを振り返ると、興味深いことが起きています。

最初に僕が語っていたのは、

「前のようなモチベーションがない」

という話でした。

ところが、そこから体験を深めていくと、

「寂しい感じ」

が出てきた。

最初から、

「本当は何が寂しいんだろう?」

と考えたわけではありません。

「モチベーションがない原因は、寂しさだ」

と分析したわけでもありません。

むしろ、そういう答えを探さずに、

メタファーを空間に置き、位置に入り、演じ、身体の反応を感じていった。

その結果として、「寂しい感じ」が現れてきたわけです。

ここに、今回みなさんに体験してほしかったことがあります。

問題を「理解する」のではなく、「体験」に変えてみる

僕らはクライアントの話を聞いていると、つい、

「なぜそうなったんだろう?」

「このパーツは何を守っているんだろう?」

「本当の問題は何なんだろう?」

と答えを探したくなります。

もちろん、それが必要な場面もあります。

でもDay1では、少し違うことをしました。

すぐに答えを出さない。

その代わりに、

今ここに現れているものに興味を持って、そこに居続ける。

講座の中で話したように、蓋を一つ開ける。

何か出てきたら、またそこに興味を持つ。

さらに蓋を開けてみる。

あっちこっちへ行くのではなく、同じところに居続けながら、少しずつ理解を深めていく。

僕の事例で言えば、

「モチベーションがない」

「潮目にいる」

「風呂の中にいる」

未来の自分から「もうちょっと」と言われる

風呂の中の自分に入る

身体が固まる

さらにその固まりを体験する

フェルトセンスが現れる

あえて言葉にするなら「寂しい感じ」

という流れです。

最初から「寂しさ」を探したわけではありません。

一つ前に現れたものを丁寧に体験していった結果、次のものが自然に現れてきた。

ここが「喚起的に関わる」ということの一つの意味だと思います。

Day1の冒頭でもお話ししたように、僕らが目指しているのは、外から正しい情報を入れることではありません。

その人の内側にすでにあるものが、外へ現れてくるための道をつくることです。

だから、

セラピストが答えを見つけるのではなく、その人の内側から答えが姿を現すプロセスをつくる。

エリクソンが大切にしていたのも、情報を与えることより「意味を持つ体験」をつくることでした。

今回の僕自身の事例は、そのことがとても分かりやすく現れた体験だったと思います。

問題を説明しているだけでは見えなかったものが、

位置に入り、演じ、感じることで姿を現してくる。

「モチベーションがない」という問題の奥に何があるのかを、頭で推測したのではありません。

体験を一つずつ深めていったら、

そこに、

「寂しい感じ」

がいた。

Day1で皆さんに掴んでもらいたかったのは、まさにこの感覚です。

問題を急いで変えなくていい。
まず、そのパーツをもっと知ってみる。

そこに十分な興味を向け、体験を深めていくと、

その人の内側から、次に必要なものが自然に姿を現し始めます。

カテゴリー一覧