※この記事は、Evocative Session Lab Practice3の内容をもとに構成しています。一部、講座での学びを前提とした専門的な内容を含みます。
パーツが出てくると、つい「このパーツを変えなければいけない」「なくさなければいけない」と考えたくなることがあります。
あるいは、「なぜこのパーツができたのだろう」と、過去に戻って理由を探したくなることもあります。
もちろん、「なぜ」と考えることが悪いわけではありません。
ただ、パーツができた頃のことは、本人も覚えていない場合があります。生まれて間もない頃の経験や、言葉になる前の関係性の中で、パーツのようなものができてくることもある。
だとすると、過去の理由を完全に解き明かすことは、そもそも難しい。
それよりも、今この瞬間に、そのパーツが何をしようとしているのかを見る方が、これからの自分には役に立つことがあります。
パーツは、今も何かを守ろうとしている
例えば、女性に近づきたいと思っている人がいるとします。
大人の自分は「近づいてみたい」と思っている。
でも、どこかから「危ないよ」と止めるものが出てくる。後ろから引っ張るかもしれないし、首を絞めるようにして「行くな」と言うかもしれない。
その時に、「昔、お母さんが助けてくれなかったからだ」と、過去のお母さんとの関係を解き明かそうとすることもできます。
ただ、今必要なのは、過去の出来事を整理することだけではありません。
今、女性に近づこうとした時に、そのパーツは何をしようとしているのか。
危険から守ろうとしているのかもしれない。傷つかないように止めているのかもしれない。
だとすると、そのパーツを消そうとするのではなく、今の自分とパーツとの関係を見ていくことになります。
「私はこうしたい」
「でも、それは危ない」
この二つがぶつかっているなら、どうしたら一緒に進めるのかを探していく。
いきなり近づくのではなく、まず手を差し出すだけにする。声をかけるところから始める。近づきすぎない程度にしておく。
そのくらいなら大丈夫だとパーツが経験できれば、少しずつ学び直していけることがあります。
パーツを変えるのではなく、もう一度、一緒に進める関係をつくっていく。
私が見たいのは、そういう今の関係です。
仲良くする方法は一つではない
パーツと関係を結び直す方法は、決まった一つのやり方があるわけではありません。
会話が必要なこともあります。
非言語的なやりとりが必要なこともある。身体の感覚や動きを使うこともある。何かを理解する必要がある場合もあります。
その人の価値観や信念、普段使っている感覚、これまでに学んできたこと。そういうものが、全部関係してきます。
「これをやればパーツが変わる」というより、その人とパーツが、もう一度仲良くなるために何ができるかを探していく。
セッションでは、私もいつも「どうしようかな」と考えています。
最初から答えが見えているわけではありません。
話をしているうちに何かが出てくる。それを少し聞いてみる。そこからまた別のものが出てくる。その都度、出てきたものを捕まえていく。
そうやっているうちに、状態が変わっていくことがあります。
出てきたパーツを、すぐに動かそうとしない
あるケースでは、胃が痛くなる人がいました。
その人は、人と会うと元気になるという部分も持っていたので、人に会いに行くことを提案していました。でも、胃が痛いから行かない。行かないから寂しくなる。寂しくなるから、また体調が悪くなる。
そんな循環が起きているようでした。
そこで、その循環がどちら向きに回っているのかを聞いてみた。
一方に回すと、パーツは悲しそうになる。反対に回すと、少し良い感じがする。パーツも喜んでいる。
その後、別のパーツが「私も一緒に遊びたい」と言っていることが出てきました。
最初から三つのパーツがいるとわかっていたわけではありません。
話をしながら、思いついたことをやってみた。相手の反応を見て、またやってみた。その中で、少しずつ関係が見えてきた。
ここで大事なのは、パーツをこちらの都合で動かすことではありません。
「ここにあるから、こっちに移しましょう」とすぐに決めるのではなく、まず、その位置にあるパーツを見て自分はどう感じるのかを聞く。
そこから、右に動かしてみたらどうか。左ならどうか。遠くならどうか。後ろならどうか。
いろいろ試してみる。
その経験自体が、パーツにとっての学びになることがあります。何かをしたから、すぐ結果が出るとは限らない。帰ってから、数日後に変化が出てくることもあります。
だから、結果を焦らない。
パーツを追い越さない
パーツとの関わりでは、クライアントを追い越さないことも大切です。
こちらが「こうした方がいい」と先に進めてしまうと、パーツとの関係をつくる前に、こちらの考えを押しつけることになります。
まず、今どこにあるのか。
そこにいるパーツを見た時、どう感じるのか。
そのパーツの中に入ったら、どんな感じがするのか。
一つずつ、現れたものに入っていく。
その上で、必要なら位置を変えてみる。身体を動かしてみる。別の視点から見てみる。普段の生活にある趣味や、好きなキャラクター、身近な物を使ってみる。
座ってうまくいかなければ、立ってみればいい。立ってうまくいかなければ、寝転がってみてもいい。
相手を変えようとするのではなく、こちらのやり方を変えていく。
そういう柔軟さも必要になります。
こちらが納得することが目的ではない
セッションの後に、「もっとこうすればよかった」と思うことはあります。
私もいつも、後からいろいろなアイデアが出てきます。
ただ、セッションはコーチのためのものではありません。クライアントのものです。
こちらがすっきり納得していなくても、クライアントにとって何かが起きていることはあります。変化がその場で見えず、家に帰ってから出てくることもある。
こちらに少ししこりが残るくらいの方が、相手にとっては良いセッションだったという場合もあります。
私たちは、相手の中で何が起きたのかを全部確認できるわけではありません。
種をまくようなものかもしれない。
その場では何も起きていないように見えても、後から何かが動き始めることがあります。
パーツを消すのではなく、変えるのでもなく、今ここで何をしようとしているのかを見ていく。
そして、そのパーツと今の自分が、もう一度一緒に進めるように話し合う。
何が必要なのかは、その時になってみないとわかりません。
だからこそ、私はいつも「どうしようかな」と考えながら、その場に出てきたものと関わっていくのだと思います。
