「部下に『これをやって』と言ったのに、やる気がなさそう…」
「子どもに『宿題しなさい』と言っても、全然動かない…」
「クライアントにアドバイスをしたのに、結局実践してくれない…」
そんな経験はありませんか?
リーダー、コーチ、コンサル、セラピストなど、人をサポートする立場の人がよく直面するのが、相手が受動的になり、指示に抵抗を示すこと です。
多くの人は、つい「こうしなさい」「これをやってください」と直接的に指示を出してしまいます。しかし、言われたから従うだけでは、相手は受け身になり、モチベーションが上がりません。 結果として、その場限りの行動になり、次につながらないのです。
では、どうすれば 「やらされている感」ではなく、「自らやりたくなる」ような声掛け ができるのでしょうか?
心理療法家のミルトン・エリクソン博士は、催眠を「相手主体のプロセス」と考えていました。
つまり、「こうしなさい」と命令するのではなく、相手が「こうしたい」と自然に思える状況を作り出すこと を大切にしていたのです。
では、どうやって相手が「自発的に動きたくなる状況」を作るのか?
そのカギとなるのが 「準拠枠(フレーム・オブ・リファレンス)」 です。
準拠枠とは、その人がどのように世界を捉えているかという価値観や物の見方 のことです。
たとえば、農夫が「今日はいい日だ」と言うとき、その背景にはさまざまな価値観があります。
- 婚約者とピクニックに行く日だから(=人との交流を大切にする価値観)
- 太陽が輝き、干し草を刈るのに最適な日だから(=生産性を大切にする価値観)
- 6週間ぶりに雨が降りそうだから(=自然の恵みを大切にする価値観)
一見同じ「いい日」でも、何を大事にしているかによって意味は変わります。
相手の価値観に沿った言葉をかけることで、相手の心に響き、モチベーションが高まります。
たとえば、上の農夫の価値観に合わせた声掛けはこんな感じになります。
- (人との交流を大切にする人へ)
→「これから大切な人との時間を心地よく過ごせたらいいですね!」 - (生産性を大切にする人へ)
→「今日は、すべてがスムーズに進むように願っています!」 - (自然の恵みを大切にする人へ)
→「今までやってきたことが実を結ぶ重要な日になりそうですね!」
もしあなたがリーダーなら、チームメンバーに対してこう声をかけられます。
✅ 人との交流を大事にする人には
「チームで楽しみながらやることで、素晴らしい成果に繋がるよ!」
✅ 生産性を大事にする人には
「しっかり集中して取り組むことで、スムーズに仕事が進むはず。それが成果に繋がる最善の道だと思うよ。」
✅ コツコツ積み重ねることを大事にする人には
「今、一生懸命に取り組んでいることが、大きな実になる。焦らず土台をつくっていこう!」
人は、自分の価値観に沿った言葉をかけられると、自然と「やってみよう」と思えます。
逆に、自分の価値観に合わない言葉をかけられると、無意識に抵抗を感じます。
例えば、「楽しみながらやることが大事」と思っている人に、「とにかく効率よく!」と言ってもモチベーションは上がりません。
逆に、「効率重視」の人に「みんなで楽しくやろう!」と言ってもピンとこないでしょう。相手の価値観を理解し、それに合わせて声をかけることで、相手のモチベーションを大きく引き出すことができます。
あなたの周りの人は、どんな価値観を持っていますか?
✅ 仕事で大事にしているのは、チームワーク? それとも効率?
✅ 子どもは、褒められると伸びるタイプ? それとも達成感を感じることでやる気が出るタイプ?
今日、誰かと会話をするときに、相手の価値観を意識して声掛けをしてみてください。
ほんの少しの違いで、相手の反応が変わるのを実感できるはずです!