セッションの中では、クライアントに深い気づきが起きることがあります。「すごく良かった」と言って帰っていく。怖さを感じながらも、少し前に進めた実感がある。

けれど数日後には、また元に戻っているように見える。セッション中には深く共鳴し、何かを感じていたはずなのに、日常は変わらない。

こうした場面に出会うと、セッションの中身が足りなかったのだろうか、と考えたくなるかもしれません。でも実は、問い直したいのは中身だけではありません。

セッションで起きたことを、その後の人生へ持ち帰れる形にして終えられているだろうか。

セッションの終わり方には、そのための大切な役割があります。

体験を「今日は良かった」で終わらせない

セッションの中で起きたことを、そのまま終わらせてしまうのはもったいないことです。

終わりの時間は、そこで起きた経験の中から、鍵となる学びを際立たせていく時間でもあります。クライアント自身が、「今日一番大事だったことは何だったのか」を思い出せるようにする。

例えば、クライアントが「怖かったけれど、少しだけ前に進めた」と言ったとします。

その言葉をそのまま受け取って終えるのではなく、こんなふうに尋ねることができます。

> その中で、一番残したい感覚はどんなところですか?

ここでしているのは、体験の核を特定することです。

セッションの中ではいろいろなことが起きます。感じたこと、話したこと、気づいたこと。そのすべてを持ち帰ろうとするのではなく、その人にとって何が最も大事だったのかを見つけていく。

そうすることで、セッションでの体験が、ただその場で起きた出来事ではなく、これから使える学びへと変わっていきます。

その感覚が、明日の日常で起きるとしたら

ただ、学びが言葉になっただけでは、まだセッションの中にあります。

そこで、その学びを未来へ広げていく必要があります。「今日良かった」で終えるのではなく、明日や明後日、もっと先の場面に置いてみるのです。

例えば、こんな問いです。

> それが明日、あなたの中で起きるとしたら、どんな感じでしょうね。

もしクライアントの中に、少し怖くても話せる自分が出てきたなら。その自分が職場にいたらどうでしょう。来週、いつもの会議の場面だったらどうでしょう。

セッションで見つけたものを、実際にその人が生きる日常の中へ配置していく。

これは、変化を現実で使っていくためのプロセスをつくることでもあります。その人の神経が、少し先の場面を練習するような感じです。

セッションの中で可能だったことが、日常でもまったく同じようにできるとは限りません。だからこそ、日常の具体的な場面に重ねながら、その感覚を先取りしてみることが大切になります。

自分への約束が、オアシスから日常への橋になる

そして終わりに、自分自身への約束を言葉にしていくことができます。

ここでいう約束は、大きな決意ではありません。今の自分が自分に対して、何をするのかを宣言することです。

> 今のあなたが自分にできる小さな約束があるとしたら、どんなことでしょうね。

「こういうことをしてみます」

「こういうことに気をつけてみます」

そんな小さな言葉でも、自分に約束することで、それをやろうとするモチベーションが高まっていきます。

さらに、その時間の中で感謝したいものにも意識を向けてみます。

> この時間の中で感謝したいことに意識を向けると、どんなことが湧き上がってきますか?

感謝を持って終えることで、その体験全体を肯定的なパッケージとして統合していくことができます。

自分に約束をし、自分に感謝する。そのときセッションは、「良い時間だった」という記憶だけではなく、「これを日常に持ち込もう」と思えるものになっていきます。

セッションは、また旅に出ていくための場所

セッションは、その場で人を変えることや、その場で答えを出すことだけではないのだと思います。

ここから先、その人がどう生きていくかを支援するものです。

砂漠を旅してきた人が、オアシスに入る。そしてまた、砂漠へ出ていく。セッションがオアシスなのだとすれば、大切なのは、そこで休むことだけではありません。また旅に出るために、「よし、行こう」と思える準備をすることです。

セッションの終わりは、そのための架け橋になります。

今日起きたことの核は何だったのか。それは明日、どんな場面で生きるのか。そして今の自分に、どんな小さな約束ができるのか。

いいセッションだった、で終わらせずに、その人が日常へ戻るところまでを一緒に見つめていく。そんな終わり方ができるとき、オアシスで得たものは、次の旅に持っていけるのかもしれません。

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