うまく関わっているつもりなのに、なぜか変化が起きない。
いいことを言っているはずなのに、相手に響いている感じがしない。そんな場面がある一方で、特別なことをしたわけではないのに、深い関わりや変化が起きることもあります。
この違いは、何でしょうか。
もっとよい言葉を探すことなのか。もっと多くのスキルを身につけることなのか。もちろん、スキルは重要です。ただ、セッションの中で起きる変化を見ていくと、その前に目を向けたいものがあります。
それは、コーチとクライアントの間にある関係です。
コーチングは、何かを与えることではない
コーチングは、コーチがクライアントに何かを与えるものではありません。
正しいことを伝えることでもなければ、スキルを使って相手を変えることでもない。目の前の人と、どのような関係を築いているか。そのことが、そもそもの土台になります。
多くのコーチは、無意識のうちにこう考えるかもしれません。
「自分に力があるかどうかが大事だ」
だから、もっとスキルを身につけようとする。それは大切なことです。でも、もう一つ前提として持っておきたいのは、関係そのものに力があるということです。
同じスキルでも、同じ言葉でも、同じように関わったとしても、クライアントとの信頼関係が深いほど、その言葉は深く響きます。
反対に、関係が浅いままであれば、こちらがどれだけスキルフルに関わっても、相手は拒否するかもしれない。受け取れないこともあります。
だとすると、変化が起きない理由は、単に言葉やスキルの問題ではないのかもしれません。関係の問題として見る必要がある、ということです。
クライアントも、関係をつくる主体である
クライアントは、「変えてください」「直してください」「変化させてください」と、何かをしてもらうだけの存在ではありません。
コーチと一緒に関係をつくっていく主体です。
だからこそ、クライアント自身が本音を出し、自分に向き合っていく必要があります。そして、そのためには、コーチとの関係をどれだけ信頼できるかが大きく関わってきます。
信頼できる関係の中にいるからこそ、人は自分の内側にあるものを出していける。向き合いにくかったことにも、少しずつ向き合っていける。
そう考えると、セッションの深さは、コーチが一方的に生み出すものではありません。二人の間につくられる関係が、深さを生んでいくのだと思います。
「コーチ+クライアント」以上のことが起きる
コーチングの関係には、コーチとクライアントを足しただけではない力が生まれます。
一人でノートに書いてみたり、AIと壁打ちしてみたりしても、あまり起きなかった変化があるかもしれません。それがコーチと一緒に取り組むことで、深まっていくことがあります。
そこでは、ただ質問や言葉が交わされているだけではないのでしょう。
関係の中で、何かが起きている。
だから、セッションで何を言うかを考える前に、私はどんな関係でここにいるのかを大切にしたいと思います。
頑張っているのに変化が起きないとき、もっと深い関わりをしたいと感じるとき。スキルが足りないと急いで結論づける前に、目の前の人との関係へ意識を向けてみる。
そのとき、セッションはこれまでとは少し違うものになっていくかもしれません。
