対人支援をしていると、つい「どう変えるか」「どう介入するか」「どう解決するか」に意識が向いてしまうことはないでしょうか。
とてもいい質問をした。適切な介入もできた。それなのに、相手が動かない。あるいは感情が強く出て、かえって閉じてしまう。
そんな経験があると、次はもっとよい解決策を出さなければ、と考えるかもしれません。でも、そのときに不足していたのは、解決策ではなかった可能性があります。
もしかすると必要だったのは、相手の中にある感情や問題を、いったん安全に置いておける場所だったのではないでしょうか。
変化を急ぐ前に、「受け止める場所」をつくる
多くの人は、問題があるから苦しいというよりも、問題を感じたときに安全でいられる場所がないことで、苦しさが強まっていることがあります。
問題そのものを、すぐに動かそうとする。感情を変えようとする。考え方を修正しようとする。支援者としては、相手のために何かをしてあげたいという思いから、そうした関わりになるのかもしれません。
けれども、変化の最初に必要なのは、問題に入っていって動かすことではなく、まず「今、感じている問題を安全に置いておける場所」をつくることではないでしょうか。
その場所がないまま変化を促されると、相手は自分の感情をさらに抑えたり、支援者の言葉に合わせようとしたりするかもしれません。反対に、安心してそこに置いておけるなら、すぐに解決しなくても、その人の中で何かが少しずつ動き始めることがあります。
頭でわかるだけでは、深い変化になりにくい
私たちは、頭で理解できると「わかった」と感じます。こうすればいい、こう考えればいい、と納得することもあります。
ただ、それだけでは深い変化が起きないことがあります。知識としてはわかっていても、実際の場面になると不安になったり、同じ反応を繰り返したりする。そんなときには、まだ「腑に落ちていない」のかもしれません。
腑に落ちるためには、体のどこかで「あ、大丈夫かもしれない」という感覚が起きる必要があります。
呼吸の感じ。胸のあたり。お腹の感じ。そうした体の感覚が、感情の居場所になることがあります。
支援の場では、相手の話の内容だけでなく、その体験が身体のどこで感じられているのかにも目を向けてみることができます。
ネガティブな感情を消すのではなく、抱えられるようにする
私たちは、ときどきネガティブな感情をなくそうとします。恐怖があるなら、恐怖を感じないようにする。悲しみがあるなら、早く前向きになれるようにする。
けれども、感情は簡単に消せるものではありません。だからこそ大切なのは、消すことではなく、抱えられるようになることです。
「安全に、恐怖があるんだ」
「悲しみがあるんだ」
「それでも私は、今ここに存在しているんだ」
そう感じられること。それが、感情がその人の中で少しずつ統合されていく始まりになるのではないでしょうか。
感情を変えようと急がずに、その感情がある状態でも、ここにいていい。そのための受け皿を育てていく。支援者がつくるのは、答えを押し込む場所ではなく、相手の体験が置かれていても大丈夫な場所なのだと思います。
「その体験を、体のどこで感じていますか」と尋ねてみる
では、実際の支援の中で何から始められるでしょうか。
クライアントが今、問題について話している。その体験を、体のどこで感じているのかを尋ねてみることができます。
「そのことを話している今、体のどこで感じていますか」
そう尋ねることで、話の内容を頭だけで追うのではなく、呼吸や胸、お腹など、今ここで起きている感覚にも目を向けられるかもしれません。
もちろん、すぐに明確な答えが出るとは限りません。何も感じないこともあるでしょう。それでも、変えようとする前に、感じているものに気づき、安全に置いておく時間をつくることには意味があるのではないでしょうか。
対人支援は、相手を変える技術だけではありません。むしろ、相手が自分の体験を迎え入れられる場を、一緒に育てていく仕事なのかもしれません。
相手の反応を何とかしようとする前に、その感情がそこにあっても大丈夫な場所はあるだろうか。私たち支援者自身も、そんな問いを持ちながら関わっていけると、相手の変化を急がずに待てるようになるのではないでしょうか。
