セッションの中で、クライアントさんが「こんな自分は嫌だ」「この弱さは消したい」と話すことがあります。
怒りや不安、無気力、あるいは自分でも困っている問題行動。クライアントさんが自分の一部を、まるで敵のように扱っている場面に出会うこともあるのではないでしょうか。
そんなとき、支援者である私たちも、つい「その問題を変えよう」「なくそう」と考えてしまうことがあります。けれども、そこで少し立ち止まってみたいのです。
その嫌われている部分は、何を守ろうとしているのでしょうか。
「変えなければ」と思う前に、その反応の理由を考える
今日、一緒に探求したいのは、クライアントさんのパーツへの共感です。
問題に見える反応や抵抗を、単なる改善対象として見るのではなく、その人を守ってきたものとして見ていく。そうすると、私たち支援者の関わり方も、「変えようとする関わり」から「理解しようとする関わり」へ変わっていきます。
例えば、すぐに怒る人がいたとします。表面的には、「感情のコントロールができていない」と言われるかもしれません。
でも、その怒りの奥には、「黙っていたら傷つけられる」「先に攻撃しないと自分が危険になる」という経験があったのかもしれません。その人は過去の経験から、危険を避けるために、すぐに怒るという戦略を身につけたのかもしれないのです。
そう考えると、怒りは敵ではなく、守りだったとも見えてきます。
怒りや無気力を、ただ抑えようとしない
もちろん、怒りをそのままにしてよいという意味ではありません。ただ、その反応がなぜ起きているのかを理解しないまま、「10秒数えて怒りを抑えましょう」と急いで対処しようとすると、かえってそのパーツの抵抗が強くなることもあります。
反応している側からすると、「自分は危険から守ろうとしているのに、また抑え込まれる」と感じるのかもしれません。
「何もしたくない」「もう無理です」とクライアントさんが話した場面でも、同じことが起こります。
そこで「大丈夫ですよ」「頑張りましょう」と、すぐに前へ進めようとすると、そのパーツは置き去りになってしまいます。
一方で、「そこまで動けなくなるほど、何かが苦しかったのかもしれませんね」と関わることはできるでしょう。すると、そのパーツは「そうなんです」と、少しずつ理解されたように感じ始めるかもしれません。
クライアントさんが言えない声を、支援者が代わりに言葉にする
自分が嫌っている部分について、クライアントさん自身がすぐに理解を向けるのは難しいことがあります。なぜなら、そのパーツを「もう嫌だ」と思っているからです。
だからこそ、支援者がそのパーツの声や、パーツに対する見方を代弁することが大切になる場面があります。
「この子は、必死に何かを守ろうとしていたのかもしれませんね」
「そこまでしないと、自分自身が生き残れなかったのかもしれませんね」
このような言葉は、単に原因を解釈しているのではありません。クライアントさんの内側に、新しい見方をつくっていく関わりです。
それまで自己否定しかなかったところに、理解や敬意、思いやりといった視点が入っていく。すると、これまで嫌っていたものとの関係性が、少しずつ変わっていくことがあります。
「何を守ろうとしているのか」を心に置いておく
パーツへの共感は、何でも許すことでも、問題行動を無理に肯定することでもありません。
その反応には、そうなるだけの理由があったのだと理解することです。
セッションでクライアントさんの言葉や反応に出会ったとき、私たちは「どう改善するか」だけではなく、「このパーツは何を守ろうとしているのか」と考えてみることができます。
怒りの奥に、危険から身を守ろうとした力がある。無気力の奥に、これ以上傷つかないように止まっていた力がある。問題に見える反応の奥にも、生き残ろうとしていた知恵や、守ろうとしていた願いがあるのかもしれません。
まずは、その可能性を支援者である私たちが心に置いておくこと。そして、クライアントさん自身が自分のパーツに対して、少しずつそのように思えるように関わっていくこと。
「変えなければ」と思っていた部分に、もし「守ろうとしてくれていたのかもしれない」という見方が加わったら、自分自身との関係はどのように変わるでしょうか。
