セッションの中で、クライアントさんが何度も同じパターンを繰り返している。変わりたいと言っているのに動けない。頭では分かっているのに、また元に戻ってしまう。
そんな場面に出会うと、私たちはつい「なぜやめられないのだろう」「どうしたらこの問題をなくせるだろう」と考えます。問題行動や症状を、変化を邪魔するものとして見てしまうこともあるのではないでしょうか。
けれど、もしその問題が、単に邪魔をしているのではなく、その人なりの安定をつくるための試みだとしたらどうでしょう。
「変わるのが怖い」の奥にあるもの
私たちはよく、「人は変化を怖がる」と言います。ただ、もしかすると、変化そのものが怖いというより、今ある安定を失うことが怖いのかもしれません。
人は、自分なりの安定装置をつくることがあります。それは一見すると、自己否定や問題行動のように見えるかもしれません。でも、その行動や言葉によって、なんとか自分を守っている可能性があります。
たとえば、「どうせ無理です」と言うクライアントさんがいたとします。私たちは、その言葉を自己否定として受け取るかもしれません。
けれど、「どうせ無理」と先に言っておくことで、期待しすぎないようにしているのかもしれない。うまくいかなかったときに、「ほら、やっぱりね。言った通りでしょ」と思えるように、傷を小さくするための保険をかけているのかもしれません。
そう考えると、「どうせ無理」という言葉そのものが問題なのではなく、その言葉によって何を守ろうとしているのかが見えてきます。
体の硬さも、守るための反応かもしれない
これは、心の中だけに起こることではありません。たとえば、いつも肩に力が入っている人。首や肩がよく凝っていて、実際に肩が上がったままになっている人がいます。
その状態を見て、「力が抜けないのですね」「リラックスしましょう」と言いたくなることもあるでしょう。
でも、それは単に力が抜けないのではなく、体がずっと警戒している状態なのかもしれません。
氷の上に立ったら、滑って転ばないように体を固めます。固めることで、倒れないようにする。体を安定させるために、ぐっと力が入るわけです。
そして、氷の上から降りたあとも、体がそのまま固まり続けていることがあります。もう固まらなくてもよい場所にいるのに、体はまだ警戒を続けているのです。
消すのではなく、「何を守っているのか」を見る
このような状態に対して、いきなり「それをやめましょう」「力を抜きましょう」と働きかけると、本人にとっては、守るために必要だったものを取り上げられるように感じられるかもしれません。
だからこそ、問題行動や体の硬さを、すぐに消そうとしないことが大切になります。
「これは何を守ろうとしているのだろう」と考えてみる。その問いが、セッションの入り口になることがあります。
抵抗や症状が出てきたとき、それと戦うのではなく、そこにある役割を見ていく。クライアントさんを変えようとする前に、何が守られているのかを一緒に見つめていくのです。
その方法がなくても大丈夫だと、体験していく
問題行動は、ただ消すべきものではありません。それは、その人なりの生き延びる方法だったと考えることもできます。
ですから、支援はそれを壊すことではないのだと思います。
大切なのは、「これほど固まらなくても大丈夫かもしれない」「こうしなくても、自分を守れるかもしれない」と、体が少しずつ知っていけるような、柔らかくて安全な方法を一緒に見つけていくことです。
頭で理解するだけではなく、実際に体験しながら、その人にとっての新しい安定をつくっていく。そうした時間も、セッションの重要な要素になるのではないでしょうか。
目の前にある問題行動や硬さを見たとき、私たちは何をなくそうとしているのか。そして、その反応は何を守るために続いているのか。
その問いを持つことで、関わり方は少し柔らかくなり、クライアントさんと一緒に探究できることも増えていくのだと思います。
