せっかく関係性がよくなってきたと思ったのに、クライアントさんが急に攻撃的になったり、距離を取ったり、問題を起こしたりする。そんな場面に出会ったことはないでしょうか。

あるいは、毎回のように同じような苦しい人間関係を繰り返している方もいます。「変わりたい」と話していたはずなのに、また同じような関係の中に入っていく。支援者としては、なぜわざわざ苦しいほうへ向かうのだろう、と感じるかもしれません。

けれど、その行動は単なる「悪い癖」ではないのかもしれません。その人なりに、誰かとの関わりを求める方法になっている可能性があります。

「こんにちは」に返事があるということ

交流分析には、ストロークという考え方があります。難しく聞こえるかもしれませんが、たとえば「こんにちは」と言うと「こんにちは」と返ってくる。「暑いですね」と言えば「暑いですね」と返ってくる。まずは、そうした日常のやり取りを思い浮かべてみてください。

そこには、「私はあなたを認識しています」「あなたはここに存在しています」というメッセージが含まれています。笑顔で挨拶が返ってくれば、気持ちのよいポジティブなストロークです。

一方で、「こんにちは」と声をかけたのに「うるさい」と言われたら、もちろん嫌な気持ちになります。これはネガティブなストロークです。返事をされずに無視された場合も、関わりが成立しないという意味で、ネガティブなストロークのうちに入ります。

私たちは、できれば安心できる、あたたかな関わりを求めます。ポジティブなストロークのほうがよいに決まっています。

ただ、何も返ってこないことは、とてもつらい場合があります。「こんにちは」と言っても何も起こらなければ、自分の存在がそこにないように感じられる。そのため、ネガティブなものでも、反応が返ってくるほうを選んでしまうことがあるのです。

怒られることで、やっと見てもらえた子ども

子どもの場面を考えてみましょう。子どもが親に「見てみて」と言うことがあります。何かをしようとしている自分を、こちらに見てほしいのです。

けれど親は忙しくて、返事をしない。そのまま無視してしまうこともあるでしょう。子どもにとっては、これがいちばん苦しいのかもしれません。

そこで、テレビをバンバン叩き出す。すると親は「何してるの」と怒ります。

子どもは、怒られるのがうれしいわけではありません。「わ、怒られた」と感じるでしょう。でも同時に、「やっと自分を見てくれた」とも感じる。怒られることによって、親とのつながりが生まれる瞬間でもあるのです。

ネガティブな関わりでも、つながれた。そうすると、「こうすれば反応してもらえる」という方法として、その行動を繰り返すようになることがあります。

問題行動の奥にある「関わってほしい」

こうしたやり方は、子どもの頃だけで終わるとは限りません。大人になってからも、あえて嫌なことをしたり、相手が困るようなことをしたりして、反応を引き出そうとする場合があります。

その様子だけを見ると、「なぜまた同じことをするのだろう」「変わりたいと言っていたのに」と感じるかもしれません。支援者として、問題行動を止めたくなるのも自然なことです。

けれど、そこで少しだけ視点を変えてみることはできないでしょうか。

この人は、本当はどんな関わりを必要としていたのだろう。

何かを壊したいのではなく、誰かの反応を求めているのかもしれません。攻撃したいのではなく、無視されるよりは、たとえ怒られてでもつながっていたいのかもしれません。

もちろん、その行動によって周囲が傷ついたり、関係が苦しくなったりすることはあります。だからといって、行動をそのまま肯定するということではありません。

ただ、「なぜそんなことをするのか」と責める前に、その奥でどんな関わりを求めているのかに興味を向ける。そこから、これまでとは違う見方が生まれることがあります。

「壊れている」のではなく、かつて必要だった方法

問題行動は、必ずしも今その人が壊れているサインとは限りません。かつては、そうするしかなかった関わり方の名残であることもあります。

ネガティブな関わりを求めているように見えるとき、その人は本当に嫌なことを望んでいるのでしょうか。それとも、何も返ってこない寂しさを避けるために、反応が返ってくる方法を身につけてきたのでしょうか。

私たち支援者がすぐに答えを出さなくても、その問いを持って関わることはできます。目の前の行動だけではなく、その人が求めている「つながり」に目を向けてみる。

すると、これまで問題にしか見えなかった行動が、その人なりに誰かと関わろうとしてきた跡に見えてくることがあるかもしれません。

その人は、どんな関わりを必要としていたのでしょうか。そして今、どんな関わりなら、苦しい方法を使わずに受け取れるのでしょうか。

その問いを手放さずにいることが、私たちの支援の中に、別のつながり方を見つけていく一歩になるのではないでしょうか。

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